実験事件

日々思ったことを記事にします。一貫性にかけるかもしれません。

バンドリ、ガルパ考察・序論『「バンドもの」の新しい描き方』

年の瀬です。こんな時節にブログを始めてしまうことになるだなんて。

このブログでは、普段ツイッターで捨てるように消費した多くの人に共有したいあれこれを、自分なりにできるだけ濃ゆく書いていきたいと思います。特にこれを重視する、という話題は設けないつもりでいます。SEO的によろしくなさげ。

 

さて、本ブログ最初の話題として、メディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』(以下、バンドリ)の世界観、人間関係についての考察を認めたいと思います。

 

『バンドもの』の新しい描き方

登場人物の多くが高校生のバンドリ。学園もののメディアミックス作品としては珍しく、本作では、花咲川女子学園、羽丘女子学園の二つの学校が登場します。また、登場するバンドも一つではなく、二つ三つでもなく、七つ程度のバンドが登場します。それらのバンドのメンバーたちは概ねどちらかの学校に通っており、花咲川の学生で結成されたバンド、羽丘の学生で結成されたバンドはもちろん、二つ学校の学生が混ざったバンドも登場します。

学生バンドをテーマとする上で、自分たちとは別の日常を生きるほかの学生バンドの存在というのは、この手のメディアミックス作品としては、新しい切り口なのではないかと思います。またそれは、ある高校の、軽音楽部に所属する、ある一バンドだけで描かれた従来の物語では、学生バンドは描き切れない。そんな強いメッセージだと感じます。

 

さて、テレビアニメバンドリ(以下、アニドリ)では、主人公戸山香澄と、彼女の所属する『Poppin’Party』(以下、ポピパ)結成と成長の物語が描かれます。香澄率いるポピパは、メンバー全員が花咲川の一年生であり、キーボード担当の市ヶ谷有咲以外は、同じクラスです。

彼女たちは、高等部から花咲川へやってきた香澄を中心に出会い、ポピパを結成、ライブハウス『SPACE』への出演を目指します。

アニドリではこのように、花咲川の学生、特にポピパのメンバーがメインであり、他バンドの描写は僅かです。つまり、従来の物語の文脈に限りなく近いかたちでアニメは進行していきます。しかし、少ないながら、その存在感が皆無という訳ではありません。同じ花咲川に通う先輩バンド『Glitter*Green』、SPACE出演を競うライバル『Roselia』、羽丘の生徒だけで結成された『Afterglow』の面々など、ポピパの周りには常に、同世代のライバルたちが密かに描かれました。そのほとんどはまだ、ポピパで精一杯だった彼女たちの視界には強く写りませんでした。

 

彼女たちが従来の物語の文脈を超え、真のバンドリとして描かれ始めるのが、スマホ向けソーシャルゲームバンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下、ガルパ)です。

ガルパでは、ポピパをはじめとした計五つのバンドの物語が、相互作用的に描かれます。

大小さまざま物語が(かなりの文量)散りばめられたガルパでは、至る所で彼女たちの日常を垣間見ることができます。それらは決してリニアな物語だけでなく、他バンド同士の掛け合いといった、パラレルな物語もあります。この、従来の物語ではありえなかった組み合わせ爆発的物語の数々、それらは時に他の物語へ影響を与えあい、彼女たちの物語がサザエさん時空によって閉ざされた永遠不変のユートピアでなく、成長と変化を持った青春群像劇であることを語ります。キャラクターたちの内面や、人間関係の少しの変化が、全体に影響を及ぼしあい、結果的に作品世界の魅力をより奥深いものにするのです。

 

バンドリの打ち出した新しい『バンドもの』の描き方は、ダイナミックに物語を描くだけでなく、作品世界そのものを多角的描くことにも長けています。散りばめられた設定の数々。次回は、その隠された設定について、いくつか考察してみたいと思います。